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日本ヴァレリー研究会ブログ Le vent se lève
ヴァレリーやマラルメ、サンボリストにとどまらず、文学一般、哲学・音楽・美術・映画から世界の姿まで、古き問題と最新の話題をめぐり多様な人々が集う場…... 風よ立て!……
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大出敦『余白の形而上学──ポール・クローデルと日本思想』(水声社、2025年)/ 黒木朋興
「余白の形而上学」というタイトルの中の「余白」という言葉、あるいは「虚無」「空白」「無」「沈黙」などとも言い換えが可能だ。この概念はマラルメを師と仰ぐ象徴主義以降の文学、及び前衛芸術運動において重要視されてきた。理論的・美学的な核と言っても良い。大出氏のこの著作は、マラルメ...
9月23日読了時間: 15分
柴田秀樹『ミシェル・フーコー 自己変容としての文学』(青土社、2025年)/ 坂本尚志
ミシェル・フーコーは「哲学者」である。2026年に生誕100周年を迎えるこの思想家について今こう形容しても、さほど違和感はないのかもしれない。しかし、フーコー自身が「自分自身は哲学者ではない」(「批判とは何か」)と述べているように、彼が「哲学者」であるというのはそれほど自明...
8月29日読了時間: 10分
アントワーヌ・コンパニョン『ブリュヌチエール──ある反ドレフュス派知識人の肖像』(今井勉訳、水声社、2024年)/ 渡辺惟央
「知識人」成立史の裏面 フェルディナン・ブリュヌチエールという一見して保守的な文芸批評家の思想と行動から、19世紀末のフランス社会の複雑な様相を再構成する、伝記にして社会史的な著作である。 原書(スイユ社、1997年)が刊行された1990年代末は、第三共和政やドレフュス...
8月28日読了時間: 13分
正清健介『小津映画の音──物音・言葉・音楽』(名古屋大学出版会、2025年)/ 宮本明子
小津安二郎は、黒澤明や溝口健二と並び、日本を代表する映画監督である。小津をめぐって、さまざまな議論が交わされてきた。しかし、その多くは小津の映画の構図やアングルなど、見てそれとわかりやすい特徴や脚本、演出についてであった。こうした中、本書は小津の映画に現れる音に真摯に向き合...
8月27日読了時間: 3分
アントワーヌ・コンパニョン『ベルナール・ファイ ある対独協力知識人の肖像』(今井勉訳、水声社、2025年)/ 有田英也
事例か運命か、それともモデル? 日本でその著作が多数、翻訳されているアントワーヌ・コンパニョンの手になる、ナチ占領下で国立図書館館長を務めたベルナール・ファイ(1893-1978)の伝記(ガリマール社、2009年)である。なぜコンパニョンがファイを取り上げ、その書評がヴァ...
8月2日読了時間: 8分
レジス・ドゥブレ『ヴァレリーとのひと夏』(恒川邦夫訳、人文書院、2024年)/ 井上直子
本書は、「メディオロジー」という新しい学問の提唱者、レジス・ドゥブレがラジオネットワークのフランス・アンテールにおいて、ひと夏に亘って語ったヴァレリー論である(それゆえ、32章構成になっている)。「訳者あとがき」によれば、ドゥブレは主著『メディオロジー宣言』において、ヴァレ...
6月8日読了時間: 8分
あふれる言葉/声たち——『エリック・ロメール——ある映画作家の生涯』(水声社、2024年)書評 / 正清健介
ロメール映画のなかでは誰もタバコを吸わない。映画のなかでも撮影のさなかでもだ——セルジュ・レンコとフランソワーズ・エチュガレイが『パリのランデブー』の撮影のさなかにこっそりと吸ったのを除いては。(432) [1] たとえば、『モード家の一夜』(1968 [2]...
5月7日読了時間: 14分
ジョルジュ・ディディ゠ユベルマン『われわれが見るもの、われわれを見つめるもの』(松浦寿夫・桑田光平・鈴木亘・陶山大一郎訳、水声社、2024年)/ 大岩雄典
ジョルジュ・ディディ゠ユベルマン『われわれが見るもの、われわれを見つめるもの』は、ミニマル・アートを題材に、著者の「十八番」であるイメージ論を展開する。 ディディ゠ユベルマンの著作は、しばしば大部で、またそのイメージ論の理念に通ずるパラディグマティックな構成、すなわち同系...
2月2日読了時間: 34分
ジャン=ニコラ・イルーズ『マラルメ 諸芸術のあわい』/ 森本淳生
ボードレールが「香り、色彩、音が答えあう」「コレスポンダンス」を歌って以来、19世紀後半のいわゆる象徴主義的思潮においては、文学・美学・音楽といった諸芸術の関係がたえず関心の対象となってきた。日本でも近年、日仏会館で「芸術照応の魅惑」をめぐるシンポジウムが数度にわたって開催...
1月15日読了時間: 28分
ジャック・ランシエール『詩の畝──フィリップ・ベックを読みながら』(髙山花子訳、法政大学出版局、2024)/ 鈴木亘
哲学者ジャック・ランシエール(1940-)による、詩人フィリップ・ベック(1962-)を論じた著作の邦訳である。ランシエールとは、ベックとは誰か、そして本書の成り立ちや構成、概要については、あとがきを兼ねた「訳者ノート」に端正にまとまっているので、ここでは繰り返さない。以下...
2024年12月20日読了時間: 8分
クロード・ピショワ/ミシェル・ブリックス『ネルヴァル伝』(田口亜紀/辻川慶子/畑浩一郎訳、水声社、2024年)/ 鹿島茂
日本と違って欧米では翻訳者の地位はかなり低く、本の表紙に訳者名が記されることすらない。そのせいか、フランスで翻訳者から詩人・小説家・劇作家に転じて名を成した人は極端に少ない。詩人のサン・ジョン・ペルス、小説家のヴァレリー・ラルボーくらいか。...
2024年11月9日読了時間: 4分
宇佐美斉『小窓の灯り——わたしの歩いた道』(編集工房ノア、2024年)/ 大出敦
個人的な話で恐縮なのだが、「宇佐美斉」という名前を初めて目にしたのは、大学三年の時だから、1989年のことだ。大学図書館の書架にあった『落日論』と題された本が目に留まり、私は何気なくそれを手に取って頁をめくってみた。この時、目次をめくってみると、宇佐美先生は、どうやらフラン...
2024年9月14日読了時間: 9分
川野惠子『身体の言語——十八世紀フランスのバレエ・ダクシオン』(水声社、2024年)/ 寺尾佳子
画面上の情報を目で追うことが日常化したいま、美しい装丁の本を手に取る喜びはたまらないものがある。本書もそう感じさせてくれる一冊である。軽やかに舞うダンサーが印象的なローマの壁画風の表紙は、あとがきによると、著者である川野惠子氏が長年のご友人にリクエストして誕生したらしい。本...
2024年8月6日読了時間: 16分
モーリス・ブランショ『ロートレアモンとサド』(石井洋二郎訳、水声社、2023年)/ 中田崚太郎
モーリス・ブランショの評論集『ロートレアモンとサド』の新訳が2023年6月に刊行された。評者はブランショを専門的な研究対象として大学院で日々彼のテクストに向き合っている者であるが、今回の新訳刊行の一報に触れた時の驚きと期待の混ざり合った感情をいまだに覚えている。そして実際に...
2024年6月11日読了時間: 24分
アンリ・ベルクソン『記憶理論の歴史――コレージュ・ド・フランス講義 1903-1904年度』(藤田尚志/平井靖史/天野恵美理/岡嶋隆佑/木山裕登訳、書肆心水、2023年)/ 濱田明日郎
はじめに まずはベルクソン哲学を学ぶものとして、そして次第にベルクソン哲学研究者として、評者はここ八年ほどベルクソンの著作を読み続けてきた。去る2023年10月、ついに発行されたベルクソンの講義録『記憶理論の歴史』邦訳を紐解いた評者は、一ページまた一ページと読み進めるにつれ...
2024年3月19日読了時間: 25分
ピエール・ミション『小さき人びと——折々の肖像』(千葉文夫訳、水声社、2023年)/ 横田 悠矢
——列車のなかでは心が張り詰めていた。これから本を書かなければならないが、できそうもなかった。 書かなければならない。しかし無気力に苛まれて筆は進まず、もう生きていたくはないが、かといって死のうとも思わない。恋人には素晴らしい原稿ができたと嘘の手紙を出し、実のところはアルコ...
2024年2月4日読了時間: 6分
大出敦編『クローデルとその時代』(水声社、2023年)/ 西村友樹雄
ポール・クローデルの生誕150周年にあたる2018年を一つの節目として、関連書籍の刊行が相次いでいる。水声社からは論集『ポール・クローデル 日本への眼差し』や図録『詩人大使ポール・クローデルと日本』、ミッシェル・ワッセルマン『ポール・クローデルの黄金の聖框』(本ブログでの書...
2024年1月30日読了時間: 15分
転覆と反転:ジャック・ランシエール『文学の政治』をめぐって / 市田良彦
【2023年12月23日に開催された、ジャック・ランシエール『文学の政治』(森本淳生訳、水声社、2023年6月刊)オンライン合評会(フーコー研究フォーラム主催)の記録】 ランシエールの書くものは面白い。政治という主題をめぐって、彼との距離の取り方を直接の知己を得て以来30年...
2023年12月28日読了時間: 26分
文学の政治、芸術の政治 / 鈴木亘
【2023年12月23日に開催された、ジャック・ランシエール『文学の政治』(森本淳生訳、水声社、2023年6月刊)オンライン合評会(フーコー研究フォーラム主催)の記録】 ランシエールは1990年代にかけて「文学論」と呼びうる著作を矢継ぎ早に刊行し――『マラルメ』(1996)...
2023年12月28日読了時間: 14分
詩人における哲学者 / 熊谷謙介
【2023年12月23日に開催された、ジャック・ランシエール『文学の政治』(森本淳生訳、水声社、2023年6月刊)オンライン合評会(フーコー研究フォーラム主催)の記録】 ジャック・ランシエール『文学の政治』は2023年、森本淳生氏により翻訳、水声社より出版された。2007年...
2023年12月28日読了時間: 14分
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