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日本ヴァレリー研究会ブログ Le vent se lève
ヴァレリーやマラルメ、サンボリストにとどまらず、文学一般、哲学・音楽・美術・映画から世界の姿まで、古き問題と最新の話題をめぐり多様な人々が集う場…... 風よ立て!……
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平野啓一郎『「カッコいい」とは何か』(講談社現代新書、2019年) / 小倉康寛
戦後日本の空白とジャズの受容 1.はじめに 本書は、1970年代から今日に至るまで、日本人にとって顕著な審美判断であり続けている「カッコいい」という観念を考察する文化批評である。そこから浮かび上がるのは、戦後の日本人たちが、文化的な空白に対峙し、ジャズをひとつのモデルとした美意識によって余白を埋め、新しい文化を生み出してきたという構図である。こうしたテーマ設定の根底には、西欧の個人主義との対比が潜んでいる。10章で構成され、新書で477ページにわたる本書は大部であり、議論も多岐にわたるため、簡潔に示そうとすれば単純化は避けられない。そこで、まずは全体の枠組みの要所を読むことにしたい。 ヨーロッパは市民社会の成立によって、ブルジョワたちの個人主義とそれに基づく趣味判断の多様性を是認した。その時、問題とされたのは、芸術の「美」であった。他方、戦後は、その個人主義が、ロックに象徴される新しい文化を中心に、労働者階級の若者たちを主役として再燃することとなる。それが、大西洋を横断しながら爆発的なブームを巻き起こしていく。敗戦によって、天皇に一元化された総
5月15日読了時間: 19分
大浦康介『フランス論2.0』(人文書院、2025年)/ 菅原百合絵
フィクション論などの文学理論研究で知られる研究者であり、パリを味わい尽くしてきた著者大浦康介のあふれ出るフランス愛を感じずにはいられない一冊である。 『フランス論2.0』と題された本書は、研究書ともエッセイとも言えないし、しかし同時にそのいずれでもある。著者は冒頭に、「私とフランスとのあいだにはたしかにいろいろあった」(19頁)と記す。その様子の一端は、『虚実のあわいに——大浦康介退職記念論文集』(大浦康介退職記念論文集編集委員会、2019年)に収録されたインタビューからもうかがい知ることができよう。その「いろいろ」のなかでフランス暮らしの酸いも甘いも噛み分けてきた著者が感じるのは、「日本人のフランス・イメージは、はっきり言って時代遅れ」(19頁)ということだ。彼によると、美食やファッション、シャンソンといった「おフランス」的なイメージは、多少色褪せてきているが、いまだ十分に更新されていない。本稿筆者もかなりそれに近い印象を抱いている。というより、著者の挙げているアラン・ドロンやピアフ、イヴ・モンタンといった名前は、フランス映画やシャンソンとい
5月6日読了時間: 14分
石川清子『マグレブ/フランス 周縁からの文学――植民地・女性・移民』、水声社、2023年 / 青柳悦子
日本では稀有なフランス語マグレブ文学研究の専門書である。著者の30年に及ぶこの分野での粘り強くまた多彩な研究の成果が一冊にまとめられることで、著者独自の文学的問題設定が豊富な情報とともに説得力をもって提示されている。読者は本書によって、マグレブ文学全体の概観を日本語訳のない多くの作品への言及を通じて得ることができるであろうし、その一方で、絵画・映画・音楽の領野にも積極的に踏み込みながら展開される著者の先鋭な議論を追うことで改めて現代文学研究をめぐる洞察を深めることができるだろう。 書評者の怠慢と能力不足のせいで、この著作の刊行からこの書評記事の完成まで3年もかかってしまったが、価値の古びることのない、また類書が出ることはほとんど期待できない貴重な専門研究書であるので、ぜひ改めて広く読者の関心がこの本に注がれることを切望している。 本書を貫く立場は題名に明確に示されているとおりで、「周縁性」という観点からフランス語マグレブ文学(以下単に「マグレブ文学」とする)を掘り下げることである。フランスの植民地であった北アフリカの国々(チュニジア、アル
4月28日読了時間: 20分
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