2020年5月25日6 分「組み立て」小説の面白さ:小柏裕俊『モンタージュ小説論――文学的モンタージュの機能と様態』(水声社、叢書《記号学的実践》、2019年)/ 大浦康介本書はモンタージュという手法に焦点を絞った小説論である。「○○小説論」が面白いことは稀だが、本書は読む者をわくわくさせる。それはおそらくモンタージュ小説そのものが「遊び心」に満ちているからである。それはまた、けっして単純とは言えないその構造を噛んで含めるように解説する著者の...
2019年12月26日7 分小倉康寛『ボードレールの自己演出──『悪の花』における女と彫刻と自己意識』(みすず書房、2019年)/ 森本淳生本書はシャルル・ボードレール(1821-1867)の詩集『悪の花』(初版1857、第二版1861)に収録された諸詩篇を、「女と彫刻」を切り口としながら、自伝とも虚構とも異なる「自己演出」の試みとして読み解くものである。著者がなによりも注目するのはボードレールの詩篇がしめす意...
2019年12月2日4 分ジャン=マリー・シェフェール『なぜフィクションか?──ごっこ遊びからバーチャルリアリティまで』(久保昭博訳、慶應義塾大学出版会、2019年)/ 立花史文学、マンガ、映画、アニメ、ビデオゲームに対して、歴史上、幾多の“有害論”が巻き起こった。1999年に出版された本書は、そうした有害指定対象を、プラトン以来のミメーシス概念にさかのぼりつつフィクションの名の下に擁護している。ビデオゲームとフランス古典悲劇の両方を、同列ではな...