2020年12月7日13 分『女は不死である』、幻の序文 / 立木康介セーヌの岸辺から、しわがれた声のリトゥルネロが聞こえてくる。 ──性関係はない と。いや、それが響いてくるのはむしろパンテオンのほう、だから聖ジュヌヴィエーヴの丘のほうからだ。声はさらにこう続ける。 ──女なるものは存在しない……!...
2020年10月11日12 分Jean-Luc Nancy, La Jeune Carpe (1979)/ 鳥山定嗣ジャン=リュック・ナンシーは風変わりな「哲学者」だ。単に「詩」を書くからというだけではない。ルクレティウスからニーチェまで古来より名高い「詩人哲学者」は存在する。だが、詩人の作品――それも500行以上に及ぶ長篇詩――のパロディを手がけた哲学者は他にいるだろうか。ナンシーが異...
2020年9月5日49 分ジャンセニスム 論争からみた歴史記述の可能性:書評 御園敬介『ジャンセニスム 生成する異端』(慶應大学出版会,2020)/ 野呂 康本書は2020年,第37回渋沢・クローデル賞奨励賞を受賞した作品である.まずは,フランス語圏に関した学術成果に対して与えられる,我が国で最も映えある賞の一つを受賞されたことにお祝い申し上げたい[1]. 実際,本書は本当に素晴らしい.読書中に思わず嘆息を漏らしたのも一度や二度...