2020年5月26日6 分原大地『ステファヌ・マラルメの〈世紀〉』(水声社、2019年)/ 松浦菜美子本書は19世紀後半のフランス詩人ステファヌ・マラルメ(1842-1898)が自らの時代との交渉の中で「いかにして詩人たろうとしたのか」(p. 11)、その歩みを描き出す試みである。初期の1860年代と詩人が円熟の域に達した90年代とをつなぐ時期として、著者はマラルメ中期と呼...
2020年5月25日6 分「組み立て」小説の面白さ:小柏裕俊『モンタージュ小説論――文学的モンタージュの機能と様態』(水声社、叢書《記号学的実践》、2019年)/ 大浦康介本書はモンタージュという手法に焦点を絞った小説論である。「○○小説論」が面白いことは稀だが、本書は読む者をわくわくさせる。それはおそらくモンタージュ小説そのものが「遊び心」に満ちているからである。それはまた、けっして単純とは言えないその構造を噛んで含めるように解説する著者の...
2019年12月26日7 分小倉康寛『ボードレールの自己演出──『悪の花』における女と彫刻と自己意識』(みすず書房、2019年)/ 森本淳生本書はシャルル・ボードレール(1821-1867)の詩集『悪の花』(初版1857、第二版1861)に収録された諸詩篇を、「女と彫刻」を切り口としながら、自伝とも虚構とも異なる「自己演出」の試みとして読み解くものである。著者がなによりも注目するのはボードレールの詩篇がしめす意...