2021年12月14日30 分声の交差点——エドゥアール・グリッサン『マホガニー——私の最期の時』書評 / 福島 亮風の交差点で、数々のつぶやき声が書かれた記号にまとわりつき、 その記号は悲痛な行列となって木の実や羊皮紙のうえに並んでいる。 (『マホガニー——私の最期の時』) この果てしない海のように吹きわたる風に一度は溺れてみるんだな…… (『第四世紀』) 0. はじめに...
2021年5月19日8 分『加藤周一を21世紀に引き継ぐために』(三浦信孝・鷲巣力編、水声社、2020年)/ 岩津 航本論集は、2019年9月に日仏会館と立命館大学で開催された生誕百周年記念の国際シンポジウム講演録である。立命館大学加藤周一現代思想研究センター長の鷲巣力と日仏会館顧問の三浦信孝の両氏の編集によって、総勢25名の論考や証言が集められている。事情があって当日参加できなかった私に...
2021年5月19日16 分他者の痛み:『愛のディスクール──ヴァレリー「恋愛書簡」の詩学』(森本淳生・鳥山定嗣編、水声社、2020年)/ 伊藤亜紗『愛のディスクール』を読んで感じた率直な感想は、ヴァレリー研究者としての戸惑いである。私は文学研究ではなく美学の立場からその芸術論を中心にヴァレリーについて研究してきたので、このような伝記的な事実については知らないことばかりだった。もっとも、冒頭に記されているように、本書は...