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日本ヴァレリー研究会ブログ Le vent se lève
ヴァレリーやマラルメ、サンボリストにとどまらず、文学一般、哲学・音楽・美術・映画から世界の姿まで、古き問題と最新の話題をめぐり多様な人々が集う場…... 風よ立て!……
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白田由樹/辻昌子編著『装飾の夢と転生 世紀転換期ヨーロッパのアール・ヌーヴォー 第1巻 イギリス・ベルギー・フランス編』(国書刊行会、2022年)/ 鈴木重周
本論集は、エクトル・ギマールやエミール・ガレといった名とともにわが国でも広く知られている「アール・ヌーヴォー」という芸術運動を、十九世紀末から二十世紀にかけての世紀転換期にヨーロッパで誕生した装飾芸術の大陸的スタイルとして改めて位置づける試みである。日本においてアール・ヌー...
2023年11月28日読了時間: 13分
ジャン・ポーラン『タルブの花』(榊原直文訳、水声社、2023年)/ 西村友樹雄
ジャン・ポーラン『タルブの花』(1941、以下『花』と略記)の邦訳は、ポーランが没する直前に出版された野村英夫の手になるものがすでに存在する(晶文社、1968)。野村訳は、『言語と文学』(書肆心水、2004)にモーリス・ブランショ「文学はいかにして可能か」とともに再録されて...
2023年9月1日読了時間: 11分
言語と時間の政治学:王寺賢太『消え去る立法者』を読む / 淵田仁
大著である。本論は王寺賢太『消え去る立法者』(名古屋大学、2023年)の内容を簡便に紹介し、その学術的意義を見定めようとする書評を目指していないことをあらかじめ断っておきたい。というのも、すでにいくつかの書評が書かれており、本書の全体像を理解するにはそれらを読むのが有益であ...
2023年7月12日読了時間: 19分
榎本泰子/森本頼子/藤野志織編『上海フランス租界への招待──日仏中三か国の文化交流』(勉誠出版、2023年)/ 馬場智也
広くフランスにかんする研究において、フランス本国を中心とした関心から視野を広げて、アフリカやカリブ海などの旧植民地ないし海外県に注目するものが盛んとなってからはすでに久しい。日本でもそうした研究に加え、ベルギーやスイス、ケベックといったフランス語圏についての研究の機運はます...
2023年5月31日読了時間: 6分
ミッシェル・ワッセルマン『ポール・クローデルの黄金の聖櫃──〈詩人大使〉の文化創造とその遺産』(三浦信孝/立木康介訳、水声社、2022年)/ 学谷 亮
ミッシェル・ワッセルマン氏の新著『ポール・クローデルの黄金の聖櫃──〈詩人大使〉の文化創造とその遺産』は、クローデルと日本との関係をめぐってある種の幻想を抱いている読者にとっては、きわめて衝撃的な書物だと言えるだろう。本書で描き出されるクローデル像は、「日本文化の讃美者」や...
2023年4月5日読了時間: 5分
ジャン・ポーラン『かなり緩やかな愛の前進』(榊原直文訳、水声社、2022年)/ 久保田斉也
本書は、ジャン・ポーランによる初期短編の翻訳集である。五つの短編物語が収録されているが、どれも、ジャン・ポーランの執筆活動において、初期段階に書かれた作品となる。ジャン・ポーランは、日本において、翻訳も数少なく、その内実があまり知られている人物とは言い難い。彼は、1884年...
2023年3月9日読了時間: 8分
ヴァレリーの言葉を導きに フランス文学者の白鳥の歌──保苅瑞穂『ポール・ヴァレリーの遺言──わたしたちはどんな時代を生きているのか』(集英社、2021年)/ 安永愛
プルースト研究の泰斗として知られ、モンテーニュやヴォルテール、さらにはレスピナス嬢についても優れた著作を残した保苅瑞穂は、奇しくもプルースト生誕150周年にあたる2021年7月10日にパリにて亡くなった。本書は、文芸誌『すばる』2019年9月号から2021年1...
2023年2月6日読了時間: 7分
アラン・コルバン編『雨、太陽、風——天候にたいする感性の歴史』(小倉孝誠監訳、小倉孝誠・野田農・足立和彦・高橋愛訳、藤原書店、2022年) / 安達孝信
本書は、Alain Corbin (dir.), La pluie, le soleil et le vent. Une histoire de la sensibilité au temps qu’il fait(Aubier,...
2023年1月28日読了時間: 7分
ヴィリエ・ド・リラダン『残酷物語』(田上竜也訳、水声社、2021年)/ 中筋 朋
はじめに——ヴィリエを翻訳するということ ヴィリエの作品を訳すときの難しさのひとつに、バランスがある。風格と読みやすさのバランス。「語り」のような雰囲気から来る推進力がありながらも一筋縄でいかないヴィリエの文章は、ただ平易に訳すだけでは取りこぼすものが大きい。ヴィリエ、いや...
2022年6月17日読了時間: 20分
『GRIHL II 文学に働く力、文学が発する力』(文芸事象の歴史研究会編、吉田書店、2021年11月)刊行に寄せて / 嶋中博章
本書のタイトルにある「GRIHL(グリール)」とは、1996年に歴史家で社会科学高等研究院(EHESS)の研究指導官クリスチアン・ジュオーと、文学研究者でパリ第三大学教授アラン・ヴィアラ(2021年6月没)を発起人として発足したGroupe de Recherches...
2022年2月6日読了時間: 10分
『ルソーと方法』(淵田仁、法政大学出版局、2019年)/ 菅原百合絵
「渋沢・クローデル賞」奨励賞を昨年受賞した本書において、著者である淵田氏は「ルソーの方法」ではなく「ルソーと方法」こそが主題なのだと幾度か強調している。一見戸惑うような助詞の選択だが、著者の問題意識が丹念に記述されている序論を読むうちにその意味は感得されてくる。評者なりの言...
2022年1月8日読了時間: 12分
声の交差点——エドゥアール・グリッサン『マホガニー——私の最期の時』書評 / 福島 亮
風の交差点で、数々のつぶやき声が書かれた記号にまとわりつき、 その記号は悲痛な行列となって木の実や羊皮紙のうえに並んでいる。 (『マホガニー——私の最期の時』) この果てしない海のように吹きわたる風に一度は溺れてみるんだな…… (『第四世紀』) 0. はじめに...
2021年12月14日読了時間: 30分
『加藤周一を21世紀に引き継ぐために』(三浦信孝・鷲巣力編、水声社、2020年)/ 岩津 航
本論集は、2019年9月に日仏会館と立命館大学で開催された生誕百周年記念の国際シンポジウム講演録である。立命館大学加藤周一現代思想研究センター長の鷲巣力と日仏会館顧問の三浦信孝の両氏の編集によって、総勢25名の論考や証言が集められている。事情があって当日参加できなかった私に...
2021年5月19日読了時間: 8分
他者の痛み:『愛のディスクール──ヴァレリー「恋愛書簡」の詩学』(森本淳生・鳥山定嗣編、水声社、2020年)/ 伊藤亜紗
『愛のディスクール』を読んで感じた率直な感想は、ヴァレリー研究者としての戸惑いである。私は文学研究ではなく美学の立場からその芸術論を中心にヴァレリーについて研究してきたので、このような伝記的な事実については知らないことばかりだった。もっとも、冒頭に記されているように、本書は...
2021年5月19日読了時間: 16分
『愛のディスクール──ヴァレリー「恋愛書簡」の詩学』(森本淳生・鳥山定嗣編、水声社、2020年)/ 田上竜也
かつて厳格な主知主義者と目されていたポール・ヴァレリーの精神世界において、波乱にみちたエロスの劇が重要な役割を果たしていたことが知られるようになって久しい。近年、遺族によるプライバシー管理がいくぶん緩やかになったことにともない、ヴァレリーが女性たちに宛てた書簡を中心とする資...
2021年5月19日読了時間: 22分
事実と虚構の境界──ジャン=マリー・シェフェール『物語の変調──物語プロセスの新たなアプローチのために』/ 久保昭博
2020年に出版された最近の著作(Jean-Marie Schaeffer, Les Troubles du récit : pour une nouvelle approche des processus narratifs, Thierry Marchaisse,...
2021年4月4日読了時間: 18分
イヴァン・ジャブロンカ『歴史家と少女殺人事件 レティシアの物語』(真野倫平訳、名古屋大学出版会、2020年)/ 嶋中博章
「レティシア・ペレ、1992年5月4日ナント生まれ、ラ・ベルヌリー=アン=レーにあるナント・ホテルのウェイトレス。彼女は2011年1月18日から19日の夜にトニー・メイヨンによって誘拐され、強姦され、殺された」。これはウィキペディアに掲載された≪Laëtitia...
2021年2月1日読了時間: 8分
ジャン=リュック・ナンシー『モーリス・ブランショ——政治的パッション』(安原伸一朗訳、水声社、2020年)/ 上田和彦
本書は、Jean-Luc Nancy, Maurice Blanchot— Passion politique, Galilée, 2011を、ブランショのとくに両次大戦間期に詳しい安原伸一朗が全訳し、詳細な註と解説を付したものである。原書は、モーリス・ブランショがロジェ・...
2020年12月13日読了時間: 10分
Jean-Luc Nancy, La Jeune Carpe (1979)/ 鳥山定嗣
ジャン=リュック・ナンシーは風変わりな「哲学者」だ。単に「詩」を書くからというだけではない。ルクレティウスからニーチェまで古来より名高い「詩人哲学者」は存在する。だが、詩人の作品――それも500行以上に及ぶ長篇詩――のパロディを手がけた哲学者は他にいるだろうか。ナンシーが異...
2020年10月11日読了時間: 12分
ジャンセニスム 論争からみた歴史記述の可能性:書評 御園敬介『ジャンセニスム 生成する異端』(慶應大学出版会,2020)/ 野呂 康
本書は2020年,第37回渋沢・クローデル賞奨励賞を受賞した作品である.まずは,フランス語圏に関した学術成果に対して与えられる,我が国で最も映えある賞の一つを受賞されたことにお祝い申し上げたい[1]. 実際,本書は本当に素晴らしい.読書中に思わず嘆息を漏らしたのも一度や二度...
2020年9月5日読了時間: 49分
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