2020年9月5日49 分ジャンセニスム 論争からみた歴史記述の可能性:書評 御園敬介『ジャンセニスム 生成する異端』(慶應大学出版会,2020)/ 野呂 康本書は2020年,第37回渋沢・クローデル賞奨励賞を受賞した作品である.まずは,フランス語圏に関した学術成果に対して与えられる,我が国で最も映えある賞の一つを受賞されたことにお祝い申し上げたい[1]. 実際,本書は本当に素晴らしい.読書中に思わず嘆息を漏らしたのも一度や二度...
2020年9月1日7 分ブアレム・サンサール『ドイツ人の村 シラー兄弟の日記』(青柳悦子訳、水声社、2020年) / 石川清子イスラーム救国戦線(FIS)の総選挙勝利をきっかけとする1990年代のアルジェリアは「暗黒の十年」と呼ばれる壮絶な内戦時代だった。日本人を含め、在アルジェリア外国人がいっせいに国外退去したことを記憶に留めている人もいるだろう。複数のイスラーム過激集団による血腥い暴力の応酬の...
2020年8月7日9 分森本淳生/ジル・フィリップ編『マルグリット・デュラス 〈声〉の幻前 小説・映画・戯曲』(水声社、2020年) / 郷原佳以「幻前」とは聞き慣れない日本語である。本書は小説、映画、戯曲を貫いてデュラスにおける独特な「声」を追究しようとする論集だが、その声は「幻前」するものであるという。もともと2018年にフランス語で行われたコロックを元にしているので、フランス語版(『Zinbun』第50号)を参...