2021年5月19日16 分他者の痛み:『愛のディスクール──ヴァレリー「恋愛書簡」の詩学』(森本淳生・鳥山定嗣編、水声社、2020年)/ 伊藤亜紗『愛のディスクール』を読んで感じた率直な感想は、ヴァレリー研究者としての戸惑いである。私は文学研究ではなく美学の立場からその芸術論を中心にヴァレリーについて研究してきたので、このような伝記的な事実については知らないことばかりだった。もっとも、冒頭に記されているように、本書は...
2021年5月19日22 分『愛のディスクール──ヴァレリー「恋愛書簡」の詩学』(森本淳生・鳥山定嗣編、水声社、2020年)/ 田上竜也かつて厳格な主知主義者と目されていたポール・ヴァレリーの精神世界において、波乱にみちたエロスの劇が重要な役割を果たしていたことが知られるようになって久しい。近年、遺族によるプライバシー管理がいくぶん緩やかになったことにともない、ヴァレリーが女性たちに宛てた書簡を中心とする資...
2020年5月26日6 分原大地『ステファヌ・マラルメの〈世紀〉』(水声社、2019年)/ 松浦菜美子本書は19世紀後半のフランス詩人ステファヌ・マラルメ(1842-1898)が自らの時代との交渉の中で「いかにして詩人たろうとしたのか」(p. 11)、その歩みを描き出す試みである。初期の1860年代と詩人が円熟の域に達した90年代とをつなぐ時期として、著者はマラルメ中期と呼...